8月ジャクソンホール会議以来、注目されてきた米国CPI。
CPI発表後は株価、米国債、ドル円為替相場などへ動きが認められました。
今日の記事ではそんなCPIを発生点とした、相場への影響について考察してみます。
○ 消費者物価指数:CPIとは
○ 2022年9月13日CPIと株価
○ ジャクソンホール会議でも言及されたインフレ
◇ CPIと他相場の動き
○ 2022年9月13日CPIと米国債利回り
○ 米国債利回りと株価を比較評価
○ CPIとドル円為替相場の動き
◇ CPIの関係性へ踏み込む
○ 人件費からCPIを考える
○ CPIコア指数にも注目してみる
CPIについて確認する
消費者物価指数:CPIとは
消費者物価指数とは、消費者が購入した物品やサービスにおける物価を、統計として指数化したものを指します。
米国もさることながら、日本や欧州でも毎月発表されています。
物価は需要と供給で決まり、消費者である買い手側の需要が多くなれば物価上昇につながります。
また売り手である企業により供給不足が生じれば、それもまた市場原理として物価上昇につながる要因ともなります。
逆に買い手側の需要が減れば、価格を下げて買ってもらわざをえないので、物価の下落へとつながることもあります。
こんなCPIについてですが、過去記事でも取り上げています。興味のある方はぜひご覧ください。
【株式専門用語講座。米消費者物価指数cpiについて解説します。】
2022年9月13日CPIと株価
さて2022年9月14日に本記事を執筆中ですが、最新の米国CPIと米国株価指数について確認しておきましょう。
2022年9月13日発表の8月米国CPI(前年同月比)は予想8.1%に対して、結果8.3%と市場予想を上回りました。
そんなCPI発表当日の米国株市場ですが、各指数のパフォーマンスは下記の通りでした。
○ S&P500 : 3932.68 (前日比-4.32%)
出典:TradingView
○ ダウ平均株価 31104.98 (前日比-3.94%)
○ ナスダック総合 11633.57 (前日比-5.16%)
なんとなく『予想を上回る物価指数で、アメリカ人の生活も苦しいし、株価が下がっちゃったのかな…』なんて考えてしまいそうですが、CPIと相場との関係性を探るにはもう少し踏み込んで考えていく必要があります。
まずは8月下旬に終えたジャクソンホールを振り返ってみましょう。
ジャクソンホール会議でも言及されたインフレ
毎年8月に開催されるジャクソンホール会議。今年も例年通りワイオミング州ジャクソンホールで開催されました。
ジャクソンホール会議は中央銀行関係者や経済学者が参加。そして経済や金融に関して議論するシンポジウムになります。
FOMCのように具体的に金利政策が決まるわけではありませんが、FRB議長も発言することから市場関係者から例年注視されています。
2022年8月下旬に開催されたジャクソンホール会議におけるFRBパウエル議長の発言として、インフレーション対策を続けていく姿勢を打ち出していました。
そのため市場関係者はジャクソンホール直近のCPIである9月13日の発表に注目していたため、予想を上回るCPI結果が相場へ影響を与えていたのでないかとも考えられます。
次章ではCPIと米国債利回り、為替相場についても考察していきます。
CPIと他相場の動き
2022年9月13日CPIと米国債利回り
CPI発表後に注目する数値はほかにもあります。
たとえば米国債利回り。米国債2年物にいたっては2022年において、9月13日時点では利回りが最高値をつけました。
○ 米国債2年物利回り 3.792%
出典:TradingView
○ 米国債10年物利回り 3.451%
米国債10年物利回りも2022年において、9月13日時点では2番目の高さになりました。
一般的に米国債における既発債は、利上げにより割高となるので、売られて利回りが上がることがあります。
また米国債利回りは金利政策を織り込みにいっているものの、CPI高値でのインフレ対策として、予想を超える利上げを考慮された場合はさらに売られて、利回りが上がることもあります。
そして利回りが上がると、米国債は価格が下がります。今度は割安さをふまえて、株価と比較してみましょう。
米国債利回りと株価を比較評価
米国債と株価は異なる金融商品ですが、たびたび『利回り』と用いて割安さを評価されることがあります。
株式の割安さを評価する指標のひとつに『益利回り率』があります。
益利回り率はPERの逆数で計算されます。たとえばPER20であれば
5% = 1 / 20 × 100
PER50であれば
2% = 1 / 50 × 100
となります。
たとえば米国債利回りが3%を超えているのに対して、PER50で益利回り率2%のような銘柄があるときその銘柄は割高と判断されて売却され、米国債に買いが入ることがあります。
今回の株価下落もまた米国債利回りの上昇により起因された部分もあるのかもしれません。
そんな米国債利回りと株式益利回り率の関係に関して、過去記事でも紹介しています。興味のある方はぜひご覧ください。
CPIとドル円為替相場の動き
2022年9月13日CPI発表日のドル円相場の動きは下記の通りです。
○ 終値 144.69円 (前日比1.33%)
出典:TradingView
2022年で最高値を更新しました。
円安ドル高が続く2022年ですが、CPIとの関係はどうなっているのでしょうか。
市場関係者としてはCPIで予想を超える物価高を確認すると、インフレーション対策としてFRB金利政策による利上げを織り込みにいきます。
アメリカで利上げが続くと判断し、日本が利上げせずと市場関係者が考えると、金利差の開きを考慮します。
金利差があると金利の高い通貨を買って、金利の低い通貨を売るとスワップ差益が得られます。つまり
米国CPIで物価高観測
↓
米国インフレ対策で利上げ
↓
日米金利差拡大。
↓
スワップ差益拡大のためドル買い、円売り
↓
円安ドル高へ
といった流れになります。
CPIの関係性へ踏み込む
人件費からCPIを考える
物価は原材料費、加工費、輸送費、在庫保管費などいろんなものが含まれています。
そしてそれらに加えて忘れてはならないのが『人件費』
人件費が高いと、その労働力で提供された商品価格はもちろん高くなります。
つまり労働コストもまたCPIへ影響を及ぼす要素のひとつになります。
人件費は労働者有利の売り手市場であれば、賃金は上がりやすくなります。例としては人手不足の企業が多く、賃金を上げてでも人材が欲しいといった状況などになります。
逆にオーナー有利の買い手市場であれば、賃金は下がりやすくなります。この場合は景気が悪く企業倒産が相次ぎ、働く場所のない労働者があふれて、安い賃金で雇い入れ可能な状況などになります。
ちなみに2022年9月より過去1年間の失業率を調べてみたところ、失業率は下がってきており、2022年7月失業率3.5%、2022年8月失業率3.7%で推移しています。
考え方としては失業率は改善し、労働者有利の売り手市場となり、賃金の上がりやすさへつながり、その労働コストが物価高へ影響しているとも考えられます。
そんなアメリカの人件費ですが、毎月発表の『雇用統計』では失業率や平均時給を確認することができます。
雇用統計については過去記事でも紹介しています。興味のある方はごらんください。
【株価へ影響を与える米国雇用統計とは。発表日や見方を解説します】
CPIコア指数にも注目してみる
CPIは同時に『CPIコア指数』というものも発表されます。
米国CPIコア指数は消費者物価指数:CPIのうち、食料やエネルギーを除く総合指数のことを指します。
ちなみに今回のCPIコア指数(前年同月比)は市場予想6.1%に対して、結果は6.3%と上回りました。
もう少しひも解くとCPIコア指数(前月比)は市場予想0.3%に対して、結果は0.6%とこちらも予想を上回っています。
つまり価格変動の激しい食料、そして原油といったエネルギーを除いたコア部分の消費者物価も上がっていることを表しています。
CPIを見るときにはこのCPIコア指数についても注目してみましょう。
CPIで市場関係者の見ているものを確認して、相場の動きを見ていきましょう。